夫が自己破産すると妻に影響ありますか
妻がいる場合には、自己破産をすることによって妻に何らかの影響があるか、妻も自己破産をする必要があるのかについて、心配になる方も多いでしょう。
まず、法律上の夫婦であっても、法主体としては完全に独立した個人ですので、仮に夫が債務超過に陥って自己破産をしたとしても、別の法主体である妻には原則として影響はなく、自動的に妻も自己破産とはなりません。債務超過であるのは夫なのであって、妻は法律上何らの債務を負っているわけではなく、また、夫婦だからといって当然に配偶者の債務を負担するという法律上の規定も存在しないからです。
ただし、いくつかの例外もあります。まず、夫の債務の中に住宅ローン債務があり、妻が住宅ローンの連帯保証をしていた場合には、夫が自己破産したことによって住宅ローン債務を免れたとしても、妻が金融機関と個別に締結した連帯保証契約はそのまま残ることになりますから、妻は主債務者である夫に代わって、連帯保証債務を負担する必要があります。この場合、住宅ローンというのは極めて高額の債務(数千万円の債務であることがほとんど)ですから、妻も必然的に自己破産をしなくてはならない可能性が高くなります。
次に、住宅ローン以外の債務であっても、夫の債務を何らかの形で保証、連帯保証をしていた場合は、夫の自己破産によって、妻の保証債務、連帯保証債務が顕在化しますので、住宅ローンほど高額な債務ではないかもしれませんが、妻が債務を支払う必要が出てきます。
このように、法律的な観点で言えば、原則としては妻に影響はありませんが、例外的に保証債務などが顕在化するという意味で妻に影響はあります。それ以外にも、事実上の問題として、夫が自己破産することによって、夫名義のあらゆる財産(たとえば、保険、自動車、不動産、高額の動産など)を手放す必要がありますので、夫の財産を事実上利用していた妻としては、夫の自己破産によってそれらの財産を利用できなくなる、という影響もあります。
これらの事態を避けるために、破産申立の直前に自動車の名義を夫から妻に変更するなどのグレーな行為をしてしまいがちですが、これらの行為は裁判所によって極めて厳格にチェックされますので(最悪の場合、免責決定を得られない事態になってしまいます)、細心の注意を払う必要があります。どのような行為が裁判所によって咎められるかはなかなか判断が難しいですので、一人でお悩みにならずに、自己破産の専門家である最寄りの弁護士に相談下さい。